同期勉強会の文献を紹介しておこうと思う。課題図書は、
大津広一「戦略思考で読み解く 財務分析入門」(ダイアモンド社)
この本は、ある同期から勧められたものだ。自分自身は、書評やブログ、店頭で見かけた記憶はなかったのだが、内容を見てみたところ、BS、PL財務分析に関わる基本的な指標を章毎に取り上げており、決算書と向き合い始めた私たちにとって適当な内容だったので、課題図書として取り上げることとした。
今週はこの第3章「損益分岐点比率」に取り組む予定だった。取り組むというのは章末にクイズが設けられていてそれに取り組むということである。第3章はトヨタ。なお、本文ではソニーの損益分岐点比率について考察、分析を加えている。
今週は、同期勉強会を開催する代わりに以下の講座を受講した。
講師は五十嵐敬喜氏(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)
テーマは「2011年日本はこうなる~経済・金融を見る眼」。
3時間の講座だったが面白くあっという間だった。特に気になった点を挙げておこう。
・相場変動の予測は中長期には意味があるが、短期は意味なし。
相場と呼ばれているものは、実需の反映だけでなく、今後値段が上がるかがるかの予測が反映されていて、みんながどう思っているかの総結集である。変動を予測するとは、みんなは知らないけれど自分は知っている材料があってはじめて成り立つ。一日二日先のことでそういった材料など無きに等しいが、より不確実性が増す一年先であれば、それなりに取り組む意味がある。
・現在の為替水準は安いのか高いのか
足下の名目実効円レート/ドル円相場は15年ぶりの高水準。ただし、物価を加味した実質実効円レートでは円高とは言えず、むしろ大幅な円安。とはいえ、輸出企業がこの円高で悲鳴を上げているのも事実。そこで輸出企業から見た実質実効円レートを算出すると、大幅な円高となる。
※
輸出企業から見た実質実効円レート=名目実効為替レート×日本の消費者物価÷日本の輸出物価(外貨建て)
一般的な実質実効円レート=名目実効為替レート×日本の消費者物価÷海外の消費者物価
ちょっとレートに関してはにわかなのであまり詳しくは語れないが、海外で物価がこの15年で5割上がっている間にデフレ日本の物価は変わっていないので、物価を加味した実質実効レートでは大幅円安と言え、海外の人にとって日本製品は「買いやすく」なっている。海外の物価が上がっているにもかかわらず、日本製品の輸出価格は新興国の台頭などの影響で2割下がっている。このため、輸出企業は相当苦しい状況に置かれているという指摘は、示唆的に思えます。
あと為替については、ドラスティックに1ドル200円300円もあり得るとおっしゃっていたのが気になる点。
・GDP成長率と生産年齢人口の関係
日本経済の長期低迷要因として以前よく言われていたのが、バブル崩壊後に企業が借金返済及び自己資本比率を上げるため設備投資を控えたバランスシート調整による不況であるという説明。だが、10年以上経った現在でも低迷が続いている現在、それでは説明つかなくなっている。そこで最近は藻谷氏の「デフレの正体」でも話題となったように、人口減少と経済成長の関係が注目されている。特に五十嵐氏が指摘していたことは、生産年齢人口(15歳から65歳の現役世代)の減少とGDP成長率の鈍化との相関性。需要の減少によって供給過剰の「需給ギャップ」が生じており、それがデフレの主因とする。
解決すべき課題としては、急速な高齢者層の増加(需要側の変化)に対し、企業のモノやサービス(供給側)が対応できていない、という点だ。つまり、需要構造に対応しきれずいまだに「ものづくり神話」にしがみつく産業構造に問題があるとする。
この指摘は、中期的には回避不可な人口動態にメスを入れる従来の少子化対策の議論をこえて、人口動態を所与のものとして、産業構造の転換に解決策を求める点でより生産的な指摘である。さらに、高齢者層が喜んで資産を使おうと思わせる魅力や安心を提供することが求められているという指摘は、まさに自分が日ごろ実感していることで、おもしろかった。
・日本はマーケティングが下手
次は外需。よく最近言われることに韓国と比べて日本の製造業はマーケティングが下手、というものがある。目新しいキーワードは「過剰品質」で、日本製品は品質や機能が高いことが誇りだが、新興国市場では必ずしも日本人に求められる水準は要求されず、過剰であるとの指摘。品質の高さで新興国市場で成功している成功事例から容易に反論することは可能だが、なんでも日本流を貫けば良いものではないことには一理ある。
以上が講座の振り返り。本当は疑問や反論を整理したいが納得する部分も多く、まだまだである。アウトプットの機会も定期的にみつけていきたい。
大津広一「戦略思考で読み解く 財務分析入門」(ダイアモンド社)
この本は、ある同期から勧められたものだ。自分自身は、書評やブログ、店頭で見かけた記憶はなかったのだが、内容を見てみたところ、BS、PL財務分析に関わる基本的な指標を章毎に取り上げており、決算書と向き合い始めた私たちにとって適当な内容だったので、課題図書として取り上げることとした。
今週はこの第3章「損益分岐点比率」に取り組む予定だった。取り組むというのは章末にクイズが設けられていてそれに取り組むということである。第3章はトヨタ。なお、本文ではソニーの損益分岐点比率について考察、分析を加えている。
今週は、同期勉強会を開催する代わりに以下の講座を受講した。
講師は五十嵐敬喜氏(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)
テーマは「2011年日本はこうなる~経済・金融を見る眼」。
3時間の講座だったが面白くあっという間だった。特に気になった点を挙げておこう。
・相場変動の予測は中長期には意味があるが、短期は意味なし。
相場と呼ばれているものは、実需の反映だけでなく、今後値段が上がるかがるかの予測が反映されていて、みんながどう思っているかの総結集である。変動を予測するとは、みんなは知らないけれど自分は知っている材料があってはじめて成り立つ。一日二日先のことでそういった材料など無きに等しいが、より不確実性が増す一年先であれば、それなりに取り組む意味がある。
・現在の為替水準は安いのか高いのか
足下の名目実効円レート/ドル円相場は15年ぶりの高水準。ただし、物価を加味した実質実効円レートでは円高とは言えず、むしろ大幅な円安。とはいえ、輸出企業がこの円高で悲鳴を上げているのも事実。そこで輸出企業から見た実質実効円レートを算出すると、大幅な円高となる。
※
輸出企業から見た実質実効円レート=名目実効為替レート×日本の消費者物価÷日本の輸出物価(外貨建て)
一般的な実質実効円レート=名目実効為替レート×日本の消費者物価÷海外の消費者物価
ちょっとレートに関してはにわかなのであまり詳しくは語れないが、海外で物価がこの15年で5割上がっている間にデフレ日本の物価は変わっていないので、物価を加味した実質実効レートでは大幅円安と言え、海外の人にとって日本製品は「買いやすく」なっている。海外の物価が上がっているにもかかわらず、日本製品の輸出価格は新興国の台頭などの影響で2割下がっている。このため、輸出企業は相当苦しい状況に置かれているという指摘は、示唆的に思えます。
あと為替については、ドラスティックに1ドル200円300円もあり得るとおっしゃっていたのが気になる点。
・GDP成長率と生産年齢人口の関係
日本経済の長期低迷要因として以前よく言われていたのが、バブル崩壊後に企業が借金返済及び自己資本比率を上げるため設備投資を控えたバランスシート調整による不況であるという説明。だが、10年以上経った現在でも低迷が続いている現在、それでは説明つかなくなっている。そこで最近は藻谷氏の「デフレの正体」でも話題となったように、人口減少と経済成長の関係が注目されている。特に五十嵐氏が指摘していたことは、生産年齢人口(15歳から65歳の現役世代)の減少とGDP成長率の鈍化との相関性。需要の減少によって供給過剰の「需給ギャップ」が生じており、それがデフレの主因とする。
解決すべき課題としては、急速な高齢者層の増加(需要側の変化)に対し、企業のモノやサービス(供給側)が対応できていない、という点だ。つまり、需要構造に対応しきれずいまだに「ものづくり神話」にしがみつく産業構造に問題があるとする。
この指摘は、中期的には回避不可な人口動態にメスを入れる従来の少子化対策の議論をこえて、人口動態を所与のものとして、産業構造の転換に解決策を求める点でより生産的な指摘である。さらに、高齢者層が喜んで資産を使おうと思わせる魅力や安心を提供することが求められているという指摘は、まさに自分が日ごろ実感していることで、おもしろかった。
・日本はマーケティングが下手
次は外需。よく最近言われることに韓国と比べて日本の製造業はマーケティングが下手、というものがある。目新しいキーワードは「過剰品質」で、日本製品は品質や機能が高いことが誇りだが、新興国市場では必ずしも日本人に求められる水準は要求されず、過剰であるとの指摘。品質の高さで新興国市場で成功している成功事例から容易に反論することは可能だが、なんでも日本流を貫けば良いものではないことには一理ある。
以上が講座の振り返り。本当は疑問や反論を整理したいが納得する部分も多く、まだまだである。アウトプットの機会も定期的にみつけていきたい。
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