2012年12月23日日曜日

Art site Naoshima


休日を利用して瀬戸内海の直島に行ってきた。直島は「現代アートの島」として世界に広く知られるようになった香川県の小島である。「ベネッセアートサイト直島」(http://www.benesse-artsite.jp)のWebサイトではベネッセホールディングスと福武財団(http://www.fukutake.or.jp/art/)が中心となって運営するアートプロジェクトの全貌を知ることができる。直島が「現代アートの島」として知られるようになったきっかけは、80年代福武書店(現ベネッセコーポレーション)の創業者福武哲彦と当時の直島町町長が「直島を文化的な場所にしたい」という想いで意気投合したことに始まる。92年にはホテル、美術館が完成、当初は美術館施設内での常設展示と企画展というよくある運営であったが、徐々に本村集落の古民家を利用した「家プロジェクト」など、自然の風景、地域の土地柄に溶け込むようなアートプロジェクトを島の各地で展開していく。このプロジェクトは、直島だけでなく豊島、犬島など他の島々での活動にも幅を広げている。

詳しいアート活動の内容は他のサイトに譲るとして、私が関心があるのは企業活動が文化活動、地域活性に与える貢献についてである。多くの企業がCSRなどと称して、社会貢献活動に取り組んでいるのはよく知られているが、ベネッセ×直島ほどに成功を収めている例はそれほど多くない。

なぜ成功できたのか。地域活性、文化振興のために美術館施設を建築することは各地の自治体でよくある話だが、直島がユニークな地位を獲得できたのは、私が考えるにベネッセの関与だからこそという点が大きいのではないかと思う。

ベネッセコーポレーション(ベネッセHD:http://www.benesse-hd.co.jp/ja/)は、「たまごクラブ」「ひよこクラブ」といた育児雑誌や通信添削の「こどもちゃれんじ」「進研ゼミ」で広く全国に名前を知られる教育出版会社である。子供や学生の頃にお世話になった人も多いだろう。ベネッセは東証一部上場の大企業であるが、本社が岡山県岡山市にあると知ったのは私も最近のことで、地元の人ならともかく、多くの人は知らないのではないだろうか。「Benesse=よく生きる」を企業理念とし、1955年の創業から当社の圧倒的主軸である教育だけでなく、育児や介護といった一人一人の生活に関わる分野へ積極に展開している。

ベネッセは当初の美術館建設だけでなく、その後も継続して直島のアートプロジェクトを支援し続けており、時間の経過と活動の積み重ねともに直島の魅力は増していくことになった。その本質として「既成の概念にとらわれない」=「なんだかよくわからない」ものであった現代アート作品が、心休まる自然の海辺の風景や素朴な古民家の点在する集落に溶け込んでいる今日の風景は、それそのものがアートへの静かな問いかけであり、それは、現代アートという「異質物」が直島という地域になじんでいくプロセスがあって初めて生まれる風景である。

ベネッセというと単なる教育の会社と思ってしまいがちだが、「Benesse=よく生きる」という企業理念にも端的に示されているように、「一人一人の人間味豊かな生き方の実現を支援する」会社という自己定義をもっているからこそ、このような息の長い活動ができたのではないだろうか。

私はまだ直島しか訪れたことがないので、別の季節を狙って、他の島々も訪れて観たいと思っている。



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